先日、渋谷のインフォスタワーに「宇宙桜」が植樹されたというニュースがあった。
宇宙桜?「宇宙」と「桜」のイメージが雰囲気的にも繋がらないのだが、いったいどんな桜なのだろうか?
調べてみると、けっこう奥が深かった
宇宙桜とは
「宇宙桜」とは、2008年11月、桜の種が宇宙飛行士の若田光一さんと共に国際宇宙ステーション(きぼう)に行き、一緒に地球の周りを4100回まわった後、2009年7月に地球に戻ってきたあと、発芽、成長した桜の事。
「花伝説・宙(そら)へ!」プロジェクトとは?
「花伝説・宙(そら)へ!(有人宇宙システム株式会社)」プロジェクトは、日本各地から集めた花の種を宇宙飛行させ、その花を育成することで地球環境保全・自然環境保護等の大切さを体感するという宇宙の教育・文化事業。
宇宙へ持っていったのは全国 14 か所の桜、ささゆり、コスミレの花の種。
中でも桜の種は、日本各地一万人の少年少女の手で集められた。
この桜の種には、千年級の名桜(日本三大桜を含む)も含まれていたらしい。
(後述の「中将姫誓願桜」とか)
帰還後、ほとんどの種が元あった場所で蒔かれた(研究所に送った一部の種を除く)。
その内のごく一部が発芽…「宇宙桜」が誕生した。
※「そらさくら」?「うちゅうさくら」?どっちで読むのかわからず…
宇宙桜の不思議
この宇宙桜、開花までの年数が普通のものより短いものがあるらしい(理由はわからないが)。
2014年4月のニュースによれば…
国際宇宙ステーション(International Space Station、ISS)で時を過ごした桜の種から育った4歳の苗木は今月1日、通常より6年も早く花を咲かせた。桜が植えられている岐阜県・願成寺(Ganjoji)の僧侶たちは、あまりの開花の早さに驚いたという。
なぜ宇宙桜は早く咲く?
岐阜県岐阜市の願成寺の境内にある樹齢1200年程度の山桜の変種「中将姫誓願桜」の種も、このプロジェクトに参加。「中将姫誓願桜」保存会がこの桜の種265粒を宇宙に送り(戻ってきた)248粒をまいたところ、翌年春に2粒が発芽した。※桜の木が初めて開花するまでには、通常は10年ほどかかる。しかも、これまで、この「中将姫誓願桜」からとれた種から発芽したことがなかったらしい。
宇宙桜が通常より早く花を咲かせたのは、願成寺の苗木だけではない。
戻された14か所のうち、4か所で通常より早い開花が確認されているそうだ。
さらに、誓願桜の花びらの数は、約30枚だが、5枚のみ…という不思議現象も起こっているらしい。
※山梨山梨県北杜市武川町「宇宙帰りの神代桜」(118粒中2粒発芽)は通常5枚だが、6枚だったそうだ。
こういうことから…
「宇宙の環境にさらされたことで何らかの影響を受けた可能性はゼロではない」という見方はあるが…
・比較対象となる木々がないため、願成寺の桜がなぜ早く成長したか説明するのは難しい
・より大きい宇宙線にさらされたことで、発芽や全体の成長が早まることが起きた可能性はもちろんありる
・科学的に見るならば、分からないとしか言えない同プロジェクトに参加した筑波大学の富田-横谷香織講師の話
※2014年4月15日AFPニュースより抜粋
宇宙桜は「きぼうの桜」へ…
現在、この宇宙桜は「きぼうの桜」として、東日本大震災の復興のために東北沿岸部を中心に植えられている。
「きぼうの桜計画」とは…
東日本大震災で津波や原発事故の被害を受けた地域(各市町村)の津波到達点以上の場所に1本ずつ、数千年生きて超巨大化する遺伝特性を持つ「宇宙桜」を植樹し、復興のシンボルに、避難の目印に、そして観光資源にする事業。
この事業の発案者「長谷川洋一さん」が退職金で「一般財団法人ワンアース」を設立。
「きぼうの桜」を、復興各地に贈り、再生日本の夢と勇気のシンボルとするプロジェクトを行っている、とのことだ。
今回の渋谷のニュースは、NPO法人「渋谷さくら育樹の会」など多くの組織や「ワンアース」も参加している「渋谷宇宙プロジェクト」の取り組みの一つだ。
ここには、高知・佐川町原産の「宇宙稚木(わかき)の桜」の苗1本を「多摩桜プロジェクト」から譲り受けて植樹した。この品種は成木でも樹高は3メートル程度で、樹齢1年でも花が咲くことがあるという。
まとめ
宇宙を旅した桜が、震災復興のシンボルとなる…。
※兵庫県淡路市「淡路夢舞台」に「宇宙桜」の「山高神代桜」が(「阪神・淡路大震災」からの復興の意も込められ)植樹。22年に2本発芽…昨年開花。
※日本三大桜…山高神代桜(山梨県)、三春滝桜(福島県)、淡墨桜(岐阜県)
最初から、ここまでは考えていなかったプロジェクトだったかもしれない。
桜の種が宇宙を旅したことで、種に何らかの変化が起き、それまで発芽しなかった種が発芽し、開花を早める。そしてそれが復興の希望やシンボルになる…。
こういうことを考えた長谷川氏とその関係者に敬意を表さずにはいられない。