2015年、ロンドンの地下鉄でエスカレーターに乗るときの「片側空け」と「両側立ち」のどちらが効率的か、実験を行った結果、両側立ちの方が片側空けの乗客の3割増しを運んだそうだ。
つまり「片側空けより両側立ちの方が効率的」ということだ。
2月14日の「チコちゃんに叱られる!」、最後の問題は「エスカレーター」。
大阪の人がエスカレーターで右側に乗るのはなんで?
「この中(岡村隆史とゲストの前田敦子、土田晃之)で、一番のシティボーイはだあれ?」という事で土田が指名される。
土田は「エスカレーターに乗る時、どちらに乗る?」と聞かれ「(自分は)関東の人間なので止まる時は、左に乗る」と答えた。関西出身の岡村は(大阪では)「右かな?」という。
※ちなみに今は、エスカレーターの「両側に止まって歩かない」というルールになっている。
そこで「大阪の人がエスカレーターで右側に乗るのはなんで?」と聞かれ、困った土田は「えー、だったら大阪の人に聞いてくれよ~」という。
改めて…
土田は「武士!」と言うが、チコちゃんのリアクションを見て即座に違うと判断。さらに「刀の位置や商人の町ということではないか?」と食い下がる。
だが「エスカレーターと江戸は関係ない」と言われ…だめ押し?で「まさかの特に理由はない!」という。が、やっぱり「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われてしまう。
〇チコちゃんの答え
⇒大阪の人がエスカレーターで右側に乗るのは阪急電鉄が始めたから(でも今は両側に立つのが当たり前)
阪急電鉄が始めたから左に立つようになった
詳しく教えてくれるのは、エスカレーターの歴史をはじめ、地域の文化や習慣を研究している江戸川大学の斗鬼正一教授。
「東京ではエスカレーター、みんな左側に立ってますよね。大阪では右側に立ってます。これは実は阪急電鉄が始めたからなんです」という。
今ではエスカレーターに乗る時、両側に乗ることになっている、にも関わらず東京では左に大阪では右に並ぶ習慣が、なかなか直らない。
なぜ大阪は「右」に並ぶのか
そもそもエスカレーターはいつ誕生したのか?
エスカレーターの誕生
今のようなエスカレーターが初めてお披露目されたのは1900年のパリの第5回万国博覧会。電気で動く2台のエスカレーターが出品され、これがきっかけで普及していった。
日本初のエスカレーターは、この万博から14年後(1914年)、上野公園で開催された東京大正博覧会でお披露目された。
このエスカレーターは移動用ではなくアトラクション用。乗車料10銭を払わなければ乗れなかった。
「当時銀座のカフェのコーヒーが1杯5銭…跳びあがるほど高かった」と、先生は言う。
同じ年には、三越呉服店(日本橋三越本店の前身)にエスカレーターが登場した。
新館の建設にあたり、1階と2階の間に設置された。
片側並びが始まった理由
当時は、エスカレーターで歩く人自体が、あまりいなかったので片側に並ぶ習慣はなかった。
片側並びが始まったのは1967年ごろの大阪。
登場は東京が初だったが、片側並びは大阪が初。
列を整理するため
大阪でエスカレーターの片側並びが始まったきっかけは、阪急電鉄のアナウンスだった。
1967年に阪急梅田駅に移転した時にエスカレーター・動く歩道が設置された。
するとせっかちな大阪人がその上を歩くようになった。
エスカレーターで立つ人の間を縫って歩くと危険なため、阪急電鉄は列を整理する目的でアナウンスを始めた。
実際のアナウンスの音源を聞くと…
「お歩きになる方のため左側をお空け願います」と確かにいっていた。
これがエスカレーターでの片側並び文化の始まりであり、大阪の右側並びという習慣の始まりだ。
なぜ左側ではなく右側に並ぶようにアナウンスをしたのかを阪急電鉄に聞いたところ「日本初かは不明だが、1967年ごろから1998年まで『右側並び』を促すアナウンスをしていたのは事実です。しかしなぜ右側並びにしたのかはとはわかっていません」との回答があったとのこと。
東京はなぜ左並びになったのか?
先生によれば「東京の左並びは1989年ごろ始まった」という。
その始まりの一つと言われているのが地下鉄・新お茶の水駅のエレベーター。
この駅は地下の深いところに作られていたためホームと改札を結ぶ長いエスカレーターが作られた。
長さ41m、当時日本の地下鉄で一番長かった。
すると、東京でも急ぎたくてエスカレーターを歩く人が増えてきた。
左並びと交通ルール
その歩く人たちを避けるために、左側に立つ習慣が始まったのだが、これには日本の交通ルールが関係しているという。
日本では車は左側通行、右が追い越し車線。
そのため東京では左側に立つようになった。
交通ルールとエスカレーター 世界的には当てはまるのか
国の交通ルールとエスカレーターの片側並びの関係は世界的には当てはまるのか?…という事で海外の人に聞いてみると…
〇フランス
エスカレーター:右に並ぶ
道路:右側通行
〇オーストラリア
エスカレーター:左に並ぶ
道路:左側通行
〇中国
エスカレーター:右に並ぶ
道路:右側通行
〇イタリア
エスカレーター:右に並ぶ
道路:右側通行
〇ニュージーランド
エスカレーター:左に並ぶ
道路:左側通行
〇シンガポール
エスカレーター:左に並ぶ
道路:左側通行
〇イギリス
エスカレーター:右に並ぶ
道路:左側通行
世界的にもおおむね当てはまるようだ。
しかし近年、片側空けを根本から否定する結果が出たという。
実は効率がいいのは両側立ちだった
2015年からロンドンの地下鉄で、ある実験を行った。
その実験とは…
「片側(右側)を歩く人のために空ける片側空け」と「左右共に歩かないで立つ両側立ち」どちらが効率的かを比較する実験。
その結果…
片側空けが2500人(/1時間)の乗客を運んだのに対し、両側立ちが3250人(/1時間)の乗客(3割増し)を運んだ。
つまり「東京・大阪の片側空けより両側立ちの方が効率的」だった、ということ。
日本でもエスカレーターの「事故も多く安全面と弱者に配慮」して各地で両側並び運動がすすめられている。
片側空けの元祖、阪急電鉄でも歩行禁止を呼び掛ける運動が始まっている。
愛ちゃん情報
大阪人はせっかちだという情報があったが、大阪人のせっかちが、かつて日本一に認定されたことがある。
1979年国際交通安全学会が各地域の歩行速度を計測した結果、大阪は1秒間に1.6m進む、これが計測した中の1位だったらしい。
まとめ
出勤時、いつも地下鉄を利用している。
数年前から「エスカレーターを歩かないで、危険!」というポスターが張られ、いつの間にかエスカレーターを歩く人がほぼいなくなったのは知っていた。(もちろん時々、歩く人もいるにはいるが)意外と日本人て、人の言うこと聞くんだな、と感心していた。