日本の下町で作れらたボブスレーのソリ「下町ボブスレー」。昨年、ジャマイカのボブスレーチームが、平昌オリンピックで使うという約束をしていたのに、直前に「使わない」と言ってきた。
その後、ジャマイカのソリの所有者であるコーチが辞めたので、もしかしたら今度こそ、使うことになるかもしれない、と思ったら…
アメリカのビール会社「レッド・ストライプ社」が「新しいソリが欲しいなら、うちにツケていいよ」と言ったらしい。となると、ジャマイカはやっぱり「下町ボブスレー」を使わない可能性が高い…
と、数日前からかなりややこしい話が出ている…整理してみた。
「下町ボブスレー」」とは
冬季オリンピックに「ボブスレー」という競技種目がある。独特な形の専用のそりに乗り、氷が張ってあるコースを滑って、タイムを競う競技だ。
この競技に使われるソリが、日本でも作られているという。
大田区の町工場で「下町ボブスレー」というプロジェクトでつくられている世界トップレベルのソリだという。これまで9台作っているそうだ。
ジャマイカチームとの関係
2016年に「下町ボブスレー」は、ジャマイカのボブスレー連盟により採用が決定。それに合わせて、各専門分野の会社などの協力のもと開発作業に取り組んでいた。
昨年10月、ジャマイカ女子チームの要望に沿った10号機のそりが完成、お披露目され、11月の国際大会から使う予定で、ジャマイカに4台のソリを提供した。
この頃は、ジャマイカチームの選手から「下町(プロジェクト)のクラフトマンシップは最高。自分のため、ジャマイカのためだけでなく下町(プロジェクト)のみんなのために戦います」というメッセージを貰っていた。
12月には、ジャマイカボブスレー連盟が資金難のために国際大会に出場できず五輪出場が危ぶまれるとして「下町ボブスレー(プロジェクト)」は資金援助を決定していた。※その後、これは、どうなったのかわからない。
使用拒否?
ジャマイカは、昨年11月の「北米杯」で、下町ボブスレーの10号機を使って銀メダルを獲得した。
ところが、その後の「ワールドカップ」では、ドイツの輸送機関がストライキをした影響で、10号機が届かず、ジャマイカは「ラトビアBTC社制のソリ」を調達した。
※このソリにはすでにラベルがあったあったなど、少々疑惑の残る調達だったようだ
その結果(ラトビアBTC社制のソリで)ジャマイカは、ポイントを獲得(7位入賞)。そして(下町ボブスレー)に対し「下町ボブスレーのソリはラトビア製より遅い」と言ったらしい。
下町側は、その対応を受け入れ、改良。その結果、データなどからジャマイカ連盟が指名したオーストリア人技術者から「BTCより速い」と評価を貰った。が…2月5日「使用拒否」を通告される。
それを受けて「下町ボブスレー」側は、2月7日、
ジャマイカ連盟が、昨年12月にラトビア・BTC製のソリを使い始めて以来、再三に渡り下町ボブスレーの使用を呼び掛けた。
クリス・ストークス会長は1月20日に「五輪は下町で」と両国大使館に表明しているが、その後、下町に対し、書面で採用・不採用との正式な表明はない。
これにより下町側は、ジャマイカボブスレースケルトン連盟に対し、ソリ開発・貸与の契約解除および損害賠償請求の法的措置を取る手続きを進める。※ HP「ジャマイカ連盟との交渉について」より抜粋
と発表した。
さらに、2月2日から、メンバー5人が平昌入りして、会場で待機している。そこでもジャマイカ連盟に協力を呼びかけるが、承認を得られない。さらに現場でジャマイカチームスタッフから「我々のソリではない」と言われ協力を拒否される。
一方、ジャマイカチーム内でも一波乱があった。
ジャマイカのコーチ、突然の辞任
2月14日、ジャマイカボブスレーチームのドライビングコーチ、ドラ・キリアシス氏(ドイツ人)が(不本意な配置換えを告げられて?)辞任した。
・五輪で使用予定のソリはキリアシス氏の所有物(らしい)なので使えない可能性がある
・ジャマイカ側はそれを拒否?
そりの所有権をめぐって争いが続いている、と伝えられた。
これを受けて、にわかに「下町ボブスレーが使われる可能性があるかも…」という話も浮上。が、ジャマイカの広報は「余裕のある他の国からの接触もある」として、出場に支障がない、と答えている、らしい。
レッドストライブ社の出現
そんな中…
「レッド・ストライプUSA」(ジャマイカ発祥のビール会社)がツイッター上で新たなそりの提供を申し出た。
公式ツイッターで「ノー・ボブスレー・ノー・プロブレム(ボブスレーがなくても大丈夫)。もし、ジャマイカ代表に新たなソリが必要なら、レッドストライプに(代金を)つけておいて欲しい。…」と発信。
ジャマイカのボブスレーチーム公式アカウントも「我々を助けるために連絡をください。」と返信したらしい。
流れ的に言えば、これで、ジャマイカはキリアシス氏のソリにこだわずに済み、新品の「ラトビアBTC社制のソリ」さえ購入できる、ことになる。
太っ腹な会社だ。カッコイイ、といえばカッコイイが…これでますます「下町のソリ」は使ってもらえなくなる可能性が高くなった。。
が、現在も、下町のメンバーは、使用再開の申し出に備えて韓国国内にそりを用意しているそうだ。
現地の待機スタッフの胸中は、かなり複雑だろう…ちょっといたたまれないな。