先日「将棋の羽生棋聖、史上初の『永世七冠』渡辺竜王破る!」という見出しのニュースが出た。
確かに羽生なら「永世七冠」いつか取れるかも、となんとなく思っていたが、それがとうとう現実になった。
…すごいことだ。
ところがうちのカミさん、なんか、すごい事成し遂げたんだな、というのは分るが、どうすごいのか、どうもピンとこないらしい。
なので、少しだけわかりやすく解説してみた。
羽生善治の「永世7冠」とは
・プロの将棋の対局には「公式戦」と「非公式戦」がある。
・公式戦は17個あるが、そのうちタイトル戦と呼ばれるものが8個ある。
(竜王戦・名人戦・叡王戦・王位戦・王座戦・棋王戦・王将戦・棋聖戦)
・勝つとすると「タイトル」=称号が貰える。
・同じタイトルを一定数獲得した場合さらに「永世〇〇(タイトルの名前)」という称号を得ることが出来る。
※8つのタイトルのうち「叡王戦」だけは永世の称号は付かないので、実質、永世が付くタイトルは7個
これを踏まえて…
羽生善治は、1995年~2008年の間に「永世棋王」「永世棋聖」「名誉王座」「永世王位」「永世王将」「永世名人」の6個を取得していた。※「王座」だけは永世ではなく名誉が付く
そして今回、竜王になったことで、永世竜王の条件(通算7期以上保持)をクリア。晴れて「永世竜王」の称号を獲得した。これにより永世(名誉)が付くタイトル7個すべてを獲得したので「永世7冠」と讃えられたのだ。
もちろんこの快挙は過去に誰も達成したことはない。
永世の称号を得るには、同一タイトルを最低でも通算5期、最大で通算10期獲得しなければならないという厳しい条件がある。この称号を得た棋士は今までで10人しかいない。
過去の大物棋士として有名な大山康晴でさえ永世5冠。2009年に引退している中原誠も永世5冠止まりだった。羽生以外の現役プロで永世の称号を持っているのは4人、いずれも1個のみだ。
これで、羽生善治の凄さ、騒がれる理由、がおわかりいただけただろうか。
参考までに…
各「永世」の称号を貰えるまでの条件は以下のとおりだ
・永世竜王…連続5期または通算7期
・永世名人…通算5期
・永世王位…連続5期または通算10期
・名誉王座…連続5期または通算10期
・永世棋王…連続5期
・永世王将…通算10期
・永世棋聖…通算5期
…気が遠くなりそうだ。
タイトル戦とは
もちろん、タイトル戦は将棋界でも非常に重んじられる戦いで、そのタイトル名をもらうことは、将棋での強さを表し大変名誉なことである。
※8個あるタイトル(竜王戦・名人戦・叡王戦・王位戦・王座戦・棋王戦・王将戦・棋聖戦)これを8大タイトルという場合もある
これらタイトル戦にはスポンサーが付いて、勝つともちろん賞金が出る。賞金額が一番多いのは竜王戦で4320万円。他のタイトル戦でも、もちろん賞金が出るらしいが、非公式となっている。ま、それでも唯一公開されている竜王戦の賞金が最高額らしい。
タイトル戦の戦い方
タイトル戦とは、タイトル保持者と挑戦者が戦うことだが、その挑戦者になるまでには、数々の対局を勝ち進まなければならない。選抜方法は、予選リーグ、ランキング戦、トーナメント制、エントリー制などで、タイトル戦によって、多少異なるようだ。
何れにしても予選優勝者が挑戦者になり、タイトル保持者と対局するのだ。
1年を通して各タイトル戦が行われる。
「王将戦」1月~3月 7番勝負 2日制・持ち時間各8時間
「棋王戦」2月~3月 5番勝負 1日制・持ち時間各4時間
「名人戦」4月~6月 7番勝負 2日制、持ち時間各9時間
「棋聖戦」6月~8月 5番勝負 1日制・持ち時間4時間
「王位戦」7月~9月 7番勝負 2日制・持ち時間各8時間
「王座戦」9月~10月 5番勝負 1日制・持ち時間各5時間
「竜王戦」10月~12月 7番勝負 2日制・持ち時間各8時間
「竜王戦 7番勝負 2日制」の意味
「竜王戦 7番勝負 2日制」の意味はおわかりだろうか。
タイトル戦の対局は、同じ場所でずーっとやるわけではない。
数ヶ月かけて、全国各地の旅館、ホテル、料亭などで行う。
今回の竜王戦の場合、
第1局 10月20、21日 渋谷
第2局 10月28、29日大船渡(岩手)
第3局 11月4、5日 前橋
第4局 11月23、24日 三条市新潟
第5局 12月4、5日指宿市(鹿児島)
で羽生の4勝1敗で決着が付いた。
もしそれでも決着がつかなければ、次は、第6局 天童市(山形)、第7局 甲府市(山梨)と決まっていたようだ。
しかも1日8時間の持ち時間。1対1の勝負で、8時間、しかもずーっと頭と神経を使うのだ。かなりきついだろう。
羽生善治はプロ生活30年にして、なんとタイトルを99回も獲得しているのだ。ここまでくると、もう、理解を超えてる…
予選から、タイトル戦までの道は、険しくて、長い。
多くのプロ達が、挑戦するのだ。強くなければ足下にも及ばないだろう。やっと這い上がった所で、羽生のような天才が相手…
もう…考えただけで無理!と、うちのカミさんように、将棋を知らない人にとっては、気の遠くなるような別次元の勝負に見えるらしい。