「6月の花嫁へ」レビュー
「6月の花嫁へ」と題されたストーリー。
酒役となった、老酒「紹興花彫酒」。
「しょうこうはなぼりしゅ」と読む。
中国では、娘の誕生と結婚を紹興酒で祝う習慣があるという。
綺麗な瓶(かめ)に込められた愛娘への想いが、30年の時を超えた時…
いったいどんな味になるんだろう。
「6月の花嫁へ」あらすじ
大杉漣と木南晴夏…
今回は何と言ってもこの「二人の父娘」の演技に注目だ。
そして、それを活かす脚本も良かった。
原作はあくまでも骨組み。
脚本で見事な肉付けをしてみせた感がある。
大杉漣演じる主人公の山村。
その娘、友子が木南晴夏。
この度、その娘の友子が結婚することになり、娘とゆっくり飲めるのもこれが最後になりそうだと二人で
レモンハートにやってくる。
そして、山さんのお気に入りのシーバスリーガルを飲みながら、10年前に亡くなった母さん(原作では存命だが)の思い出話をしている。
自分が嫁に行ったら一人ぼっちになってしまう父を心配して、結婚を止めようかなという友子に、思わず酒を吹き出してしまう父。
そして、それをおしぼりで拭く友子。
実はこれが物語のクライマックスへの大事な伏線になっているのだが…。
友子が用事で婚約者の岡田君に会いに行き、一人残される父…
その時マスターが突然、30年前(原作は二十数年前)に山村から預った一本の酒を思い出す…。
酒役:紹興花彫酒
中国では「娘が生まれた時、父親が紹興酒を土の中に埋め、そしてその娘が結婚するときに、また掘り出して祝う」習慣があるそうだ。
山村はすっかり忘れていたが、30年前、友子が生まれた時この酒をマスターに預けていたのだ。
「酒は我が子のように可愛い」というマスターが、我が娘を嫁に出すかの如く、山さんに紹興酒を返す。
ほのぼのとした良いシーンだった。
雨が降り出して、友子さんに傘を持ってこなくても良いと電話する山村。
携帯ではなく、店の公衆電話を使っていた。
この場面では、会話の内容を聞かせるという意味でも携帯でない方がしっくりきていた。
シブイ!
でもやっぱり心配で、婚約者と一緒に、傘を持って迎えに来る友子。
こうなれば、当然、みんなで二人の結婚を祝って紹興花彫酒で乾杯だ!
ちょっとわざとらしいが、婚約者が紹興酒にむせる。
その時、父親にしたのと同じように、おしぼりで拭いてあげる友子。
それを寂しそうに見つめる山村。
「あぁ、友子は本当に岡田君のものになってしまったんだな。」という心の声が聞こえてきそうだ。
そして、ちょっと飲み過ぎたと言って外に出る父、後を追いかける娘。
二人並んで夜空を見上げる。
「雨、止んだね」
「うん」
「お父さん」
「うん?」
「お父さん」
「なんだよぉ」
「おとうさん、いままで、ありがとう」
「こちらこそ」
漫画では到底表現しきれない、二人の名優の名シーンだった!
エピローグ
場面は1か月後のレモンハート。
山村が帰ろうとすると、また雨が。
その時、「も~お父さん、また傘忘れたでしょ」といって友子が入って来た…
のは幻だった。
マスターが「傘、お貸ししましょうか?」山村はおもむろにカバンから折りたたみ傘を取り出した。
寂しそうに笑いながら…。
次回のレモンハートは「安い酒の定義」
一晩で何十万も飲み代に使う丸山社長。
それを心配している経理の斎藤は、今夜も銀座の高級クラブに行こうとする社長を、無理やりレモンハートに連れて来る。
ママのいないBARに不服そうな社長。
高級な酒を頼もうとするが、斎藤がそれを止める。
代わりに、「一番安い酒を」とマスターにオーダーする斎藤。
…はてさて、マスターの出した究極の安い酒とは?