2017年、6月。
兵庫県明石市の泉房穂市長が、道路の拡張工事を巡り、立ち退き交渉が遅れたことに対し、市の担当職員に「建物に火をつけて捕まってこい!」などと暴言をはいていた、しかも音声もある、というのである。
だが、その後のニュースやワイドショーでも取り上げられ詳細が明らかになるにつれて、ただの「パワハラ知事」が「熱血市長」に見えてきた。
今回は、そのことについて書いてみた。
最初にこのニュースを聞いた時は「知事がこんな言葉を使うなんて!」と思った。
が、謝罪会見の様子や問題のパワハラ発言の前後の内容が明らかになていくにつれて「それほど悪い知事ではないんじゃないか?」と思うようになった。
この気持ちの変化は「暴言だけ」だった音声が、暴言後の音声も出てきたことにある。
少し前、高校の先生が生徒を殴った動画が公開されてニュースになった。「暴力はいけない、なんて先生だ!」と騒がれたが、その後、先生を挑発していた生徒の言動も公開された途端「あれは生徒の方も悪い!」と先生を擁護するコメントが一気に増えたのは記憶に新しい。
今回の明石市長のパワハラ発言に通じるものがあるなぁ、と感じた。
自分なりこのニュースをわかりやすくまとめて、感じたことを書いてみた。
明石市長の暴言騒動
パワハラ発言まで背景
・JR明石駅前の交差点で多発する事故を減らすため、国道2号線の拡張工事事業が2010年に始まった。※当初の完成予定は2016年12月だった。
・明石市は2012年から用地買収を行ってきたが、2017年6月の時点で立ち退きに応じていないビル1棟が残っていた。
・工事が進んでいなかったことを受けて2017年6月、市長は担当職員を市長室に呼び出し、パワハラ発言をした。
※2002年~2006年の間に42件の交通事故、その後死亡事故2件が発生している
※現在、問題の用地は買収済み、工事も進んでいる
パワハラ発言とは
市長は部下に対してこの7年間何をしてたのか、遊んでたのか、なんで(買収を)やらなかったのかと、問い詰めた。
そして「すまんで済むか、そんなもん!すまんで済まんそんなもん!立ち退きさせてこい、お前らで!今日火付けてこい!」
「今日火付けて捕まってこいお前!燃やしてしまえ!ふざけんな!行ってこい壊してこい今から建物、損害賠償を個人で負え! 当たり前じゃ、はじめから分かっとる話を」と言ったのだった。
最初の頃の報道は、この部分が何度も繰り返し流された。
謝罪会見
これを受けて市長は、同日記者会見を開いた。
泉市長は
「(発言は)パワハラであるだけでなく、さらにひどい発言だった。職員にも市民にも大変申し訳ない」「非常に激高した状況で口走ってしまったセリフ。申し訳なく思っている。まさに自分のセリフ。弁明の余地もない」と言っていた。
最後に記者から進退について聞かれた時、かなりの時間、無言だったが、やっと「…一連の状況を含めて市民にご判断を仰ぎたい」答えを絞り出したのが印象的だった。
なお、暴言の相手の部下は「パワハラとは感じていない」とインタビューでこたえていた。
「報道としての公平さを欠く」として暴言詳報を出した神戸新聞next
30日、神戸新聞NEXTは「報道としての公平さを欠く」として「多くの新聞やテレビが報じていない市長の発言の最後の方」を記事に載せた。
部下に「辞表出しても許さんぞ」「自分の家売れ」 明石市長の暴言詳報⇒https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201901/0012019280.shtml
内容を読むと「お前ら1千万ずつ出せ」とか「辞表出しても許さない」という乱暴な言葉もあるが、現場の人数を確認したり、拡張する理由をこう言う風に説明しろ、とある意味上司らしいアドバイスもしている。「難しければ私が行って土下座する」とも…
これを読んだ時、今の厚労省不正統計問題を思い出してしまった。
私たちの税金で給料をもらっていながら、統計ごまかして、不正して、首にならない国の役人たちに呆れていただけに、明石市長の方が口は悪くてもまだ立派じゃないか、とまで思ってしまった。
疑問
ほんとにパワハラ?:パワハラは相手にプレッシャーを与えることだが、今回の場合部下は「パワハラと感じていない」とコメントしている。確かに火つけてこい!は乱暴な言葉だが、1対1での会話であり公共での発言ではない。頭にきて感情的になり勢いで言ってしまう事はよくある事で、これがパワハラとされるなら、何も言えなくなるではないか。
盗聴疑惑:ワイドショーでこの部下から話を聞いていた。本人はパワハラと感じていないと言っていた。そして部屋には誰もいなかった、と言っていた。という事は当人ではない誰かがこの音声を録音し、世間にばらしたという事になるのだ…という事は、もしかして盗聴?と言う疑惑が浮かぶ…これ、別の意味でかなりヤバいでしょ。
まとめ 情報のとらえ方の難しさ
私たちは、ニュースのタイトルが「知事の暴言」で、その暴言の音声を聞けば「パワハラ知事」と言うレッテルをはってしまう。単純なことだ。
限られた時間の中で全てを伝えるのは不可能だし、仕方のない事だと思う。市長にふさわしくない暴言をピックアップした、それも嘘ではなかった、市長も認めたわけだし。
だが、それで終わったら知事は「やめろ!」の声でつぶされるかもしれない。
だが、暴言音声には、その「あと」があった。
暴言市長は、実は市民の事を一生懸命考えている(と思われる)市長だった。しかも、暴言を受けた本人は、パワハラとは思っていなかった。
音声は、本人たちの知らない所から出てきたらしい、ことも何か他意さえ感じる。4月に市長選も控えていることも、さらに疑惑が沸く。
トランプ大統領のfakenews疑惑ではないが、ややもすれば情報操作ともなりかねない。
これは、怖い事だ。
ニュースをまともに聞くな、と言っている人がいた。
なるほどな、こういう事か、と思った。