松田「何飲む?」
井出「あいつに決まってんじゃないか」
松田「まだあれ飲んでる?」
井出「あいつしか飲んでないよ」
井出が言うあいつとは「ジョニ黒(ジョニーウォーカー黒ラベル)」のことだ。
「マスター、ジョニ黒、ショット、ダブルで、チェイサーはいいです」
松ちゃんの師匠、井出が、ジョニ黒にこだわるには、それなりの深い理由があった。
…感動した!
「グッバイジョニー」の火野正平が…いい!
今回「BARレモンハート春の2時間スペシャル!」ということで今まで放送された、春にちなんだエピソードをいくつかと新作が放送された。
新作はタイトルが「グッバイジョニー」。
出演者の名前に火野正平…
タイトルとこの名前を見た時「ああ、今回はきっとおもしろいドラマだぞ」と思った。
その直感は、正しかった。
ジョニ黒を「あいつ」と呼ぶ。
火野正平だから、似合う言葉だ。
しかも思いがけないストーリー展開は嬉しい期待はずれと言っていいだろう。
元になったストーリーは「真冬の夜の夢」。
内容を知っているファンは、誰もが“こうきたかぁ~”と唸ったに違いない。
ドラマ「グッバイジョニー」のあらすじ
松ちゃんが、学生の頃、バイト先の新聞社でお世話になったという先輩の井出さんをレモンハートに連れてきた。
昔はバリバリの新聞記者で、松ちゃんがフリーライターになるきっかけを作ってくれた師匠らしい。
彼はジョニ黒を注文。
マスターは、気を利かして「1970年代の特級のジョニ黒」を出して、井出さんを喜ばせる。
その後、井出さんはレモンの常連になった。
そんなある日、松ちゃんは井出さんの身体の調子が悪そうなことに気づく。
松ちゃんが心配して病院に行くことすすめるが、拒む井出。
それを見たマスターはコルク栓の(1960年代)珍しいジョニ黒を見せ「元気になったら飲ませる」という約束をした。
暖かくなってきた頃…
松ちゃんがレモンに入る直前、編集長から携帯に連絡が入る。
先輩の井出が病院からいなくなったことと、彼の病状が良くないことを知らされる。
まさか!と思いながら、店に入るとやはり、井出さんはレモンにいた。
あのコルク栓のジョニ黒を飲むところだった。
マスターには「退院した」と言ったらしい。にわかには信じられない松ちゃんだったが…
そこで井出さんが語るのは、ジョニ黒を飲むようになったきっかけ、アル中で亡くなった先輩の話だった。
(正に漫画「真冬の夜の夢」のストーリーだった。ここでファンは「ほう!ここに持ってきたか」と思っただろう)
「松田、いままでありがとな」と握手を求めた井出の袖口からパジャマが見えた。
松ちゃんがそれを言うと「今日な、別れにきた、お前とこいつ(ジョニ黒)に…」
その後のシーンで、松ちゃんは黒い服とネクタイ姿でレモンにいた。
たぶん井出さんの葬式の帰りだろう。末期がんだったらしい。
「酒を絶って長生きするよりも飲んで燃え尽きる方を選んだんだ。」
という松ちゃん。
「わかる気がするなぁ」とメガネさん。
3人がジョニ黒で井出さんに献杯をする…
で、最後には松ちゃんがむせる、というオチがついた。
酒の演技が秀逸!火野正平
火野正平の持つ空気は独特なので、今までのレモンハートとはまた、一味ちがった感じが出ていた。
あの独特の語り口、自然なセリフ、目や雰囲気で酒の旨さを表現する…。
火野正平を久々に見たが、やはりさすが!と言うしかない。
酒を見つめる目、水のように酒を飲む姿。
彼もまた、アルコール依存なのかもと思わせる飲み方だ。
「今日な、お別れにきた、お前とこいつ(ジョニ黒)に…」
なんて、普通言える言葉じゃない。
酒を愛している人を演じ切った火野正平…いい俳優だ。
申し訳ないが、マスターやメガネさんは、ほとんど目に入らなかった。
松ちゃん役の松尾諭は、火野正平相手に、結構頑張っていたと思う。
たぶん元になったストーリーは「第2巻 真冬の夜の夢」 PART17
原作は、松ちゃんが、井出さんの葬式に行った帰りレモンに寄ったところから始まる。
松ちゃんがジョニ黒をオーダーする。
いつもと違うオーダーにマスターが聞き返すと「今日はね、ジョニ黒にしなくちゃならないんだ。」と答えるのだ。
そして松ちゃんは、井出さんの思い出話をするのだが…
実は、ドラマの中で井出さんが語った「アル中で亡くなったというの先輩」の話は、そのまま井出さんの話だ。
原作では…
井出さんのお見舞いに行った松ちゃんは、受付で酒を持っていないか聞かれる。
井出さんに会うと、中庭の桜がきれいだから、と連れて行かれ、木の下に隠したジョニ黒を見せられる…というストーリーなのだ。
まとめ
今回の作品はこのストーリーを上手く取り入れながら、感動の物語に作り上げていたから、原作を知っていた私でも十分楽しめた。
数々の名言も出ていたし、本当に面白かった。で、ちょっとうるっときた。
ジョニ黒を出された時の火野正平の顔がまたいい。
「松田、いい店だな、ここ!」
火野正平…大正解!