夜空に輝くあまたの星のうち、太陽のように自分で光りガスでできた星を恒星、太陽の周りを回っている地球や火星、木星などを惑星という。
なぜ「惑う星」と書くのだろうか?
惑星を惑う星と書くのはなぜ?
4月23日放送のNHK「チコちゃんにられる!」。
今回のゲストは、百田夏菜子と土田 晃之。
「この(岡村隆史とゲスト)中で、一番星空が好きなロマンチックな大人」と聞かれ「大好きです!」と岡村が手をあげる。
チコちゃんが「地球は太陽系第3惑星…惑う星と書く。なんで惑星を『惑う星』と書くの?」と聞かれた岡村は「自分の部屋にプラネタリュムを回していて…見ているとどれがどれやったかな、って、惑わされてんのかな?と…」と答える。
すると、チコちゃんに「惑星とは岡村を惑わすため…ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られる。
◯チコちゃんの答え
⇒惑星を惑う星と書くのは、空をさまよいまどっているから
(惑星は)空をさまよい、まどっているから
詳しく教えてくれるのは、武庫川女子大学(生活環境学部日本文学史)で日本天文学の歴史を研究している株本訓久准教授。
先生は「惑星を『惑う星』と書くのは、空をさまよいまどっているからなんです」という。
惑星を英語で「プラネット(PLANET)」と言う。
「PLANET」はギリシャ語の「プラネィティス」が語源の一つとされ、それが「さまようもの」という意味。
惑星はどのようにさまよっているのか
では惑星はどのようにさまよっているのか?
先生は「『Mitaka』というソフトを使えばすぐにわかる」という。
このMitaka(世界中国立天文台が開発)は、世界中どこの夜空でも、どの時代の夜空でも、再現してくれるソフトだ。
恒星は動いていなかった
先生は、そのソフトを今日の日付の午後10時に設定。
地球の自転周期は約23時間56分(自転1回転)。
毎日4分ずつ時間を引いて、日付を送っていき、夜空を見ていく。
すると、日付は進んでいるのに星空は全く動かない。
星座を形作る星々、恒星は地球が回転(自転)しているため東から西へ動いているように見える。
しかし、地球がちょうど一回転した時の星空を切り取って見ていくと、恒星は動いていないように見える。
動いている星=惑星
同じ様に、ある日の星空を切り取って、日付を進めてみると、全く動かない星空に動いている星が出現。
スタッフが「動いている星がある」というと先生は「それが火星ですね」という。
火星は行ったり来たりしているように見える
しかもこの火星は右に行ったり、左に行ったりと、行ったり来たりしている。
これは火星より内側を通っている地球が、火星を追い越したことによる現象だ。
番組では分かりやすく鉄道模型で説明したが、ここでは簡約する。
地球、火星、とも左回りをしているので地球から見てみると火星はもちろん左に向かって進んでいる。
しかし、地球が(太陽よりで内側にあるため)、外側の火星を追い越す時、火星は逆方向の右に向かって進んでいるように見える。
再び、ある程度距離が離れると、元に戻り、地球から見て火星は、左方向に進んでいるように見える。
これが、先ほど夜空で行ったり来たりしてるように見えた火星の動きだ。
この動きに気付いた昔の人が、星座を形作る恒星の間をフラフラとまどっている星「PLANET」と名付けた。
「惑星(まどいぼし)」「遊星(ゆうせい)」とも翻訳された
江戸時代、蘭学者本木良永という人が「PLANET」と同じ意味のオランダ語を「惑星(まどいぼし)」と翻訳した。
ただこの時、本木は「星の動きを計算するのに他の星々と違う」ので、人間を惑わすという理由で人間を惑わす星と翻訳した。
日本では、惑星の他に「遊星(游星)」とも翻訳されていた。
しかし遊星という言葉は今ではあまり聞かない。
「惑星」に統一された経緯
「惑星」に統一された経緯には、惑星を用いていた東京大学と遊星を用いていた京都大学との対立という形で紹介されることが多い。
が、対立の根底には日本の天文学の発展を願う天文学者たちの熱い思いがあったのかもしれない。
…という事で「NHKたぶんこうだったんじゃないか劇場」が始まった。
【荒木、「遊星」やめるってよ~京大VS東大 天文学者友情物語】
内容をまとめると…
この物語は京都大学で教鞭をとり、後に京都産業大学を創設した天文学者荒木俊馬教授とその仲間たち(東京帝国大学平山清次教授、京都帝国大学上田穣教授)が日本天文学の発展に思いをはせた話。
・荒木俊馬役:山西惇(京都大学出身)
・上田穣役:宇治原史規(京都大学出身)
・平山清次役:草野仁(東京大学出身)
1942年、天文術語編纂会議。
明治以降各大学が独自で使っていた天文用語を統一しようと始まったこの会議。
とはいえ13人の編纂委員の中で東大6名、京大2名。
荒木は京都大学の代表。
この会議で発言しなかったら東大組の意見ばかり通ってしまう、と、荒木にはっぱをかけるもう一人の京大代表の上田。
委員長を務めるのは東大の平山。
なので、荒木はしょうがないと弱気だ。
この会議の中で一つの争点となったのが「惑星」か「遊星」か…。
明治維新後、寺尾寿教授を中心に日本天文学会を設立した東大の「惑星」と、新城新蔵教授を中心に、天文ではなく宇宙物理学という新たな風を巻き起こした京大が推す「遊星」。
どちらに統一するかで会議は混とんとすることになる。
「遊星」を推していた新城教授は荒木教授の義父だった。
惑えるは星か人か…
新城教授が新聞社のコラムに書いた言葉だ。
新城先生は生前「星は規則正しく動いていて、惑っているのは人間の方だ」と説明。
「星の動きを理解するのに長く夢を追ったようなもの」と書いていた。
研究を楽しんでいたことがうかがえる。
だから東大出身者が好んで使う「惑星」よりも、楽しむという意味を持つ「遊星」という言葉に強いこだわりを持っていた。
会議が進む中、委員長の平山が「…PLANET、これは惑星という事で宜しいでしょうか?」と決まりかけた時、荒木が声をあげる。
「『遊星』も広く使われている言葉です。ここはひとつご一考いただけないでしょうか?」と提案する。
だが、他の委員から「これまで日本専門学会は前から『惑星』を使ってきた。今更『遊星』なんて使えるわけがないだろう」と反論。
そうこう言い合っていると、突然「これは確かに一考の余地ありです」と委員長の平山が言う。
そして「私は『遊星』という言葉を大事にしてきた新城先生の一番弟子である荒木先生の意見を無視してしまうほど野暮な男ではない」といい、夜遅くなったこともあり会議は終わった。
そして帰り際、平山は荒木に「…これからの日本の天文学は、ヨーロッパ諸国に追い付いていかなければならない…荒木先生にかかっている。『遊星』という言葉は嫌いじゃない」と、いってくれた。
惑星か遊星かずっと決まらずにいた。
そんなある日、平山は亡くなったという電話が…
1944年、天文術語集は発行され「PLANET 惑星」と記された。
※話の内容を聞く限り、荒木は「惑星」に譲ったらしいということ。
その理由とは、小惑星の第一人者である平山がこれまでに出した論文の「小惑星」の文字を「小遊星」に変えることは(荒木には)できなかったから…らしい。
このドラマを見た先生は「これまで対立という形で捕らえられていたものに対してそうではないという新しい解釈が示されたのは本当に興味深い、ありがとうございました」と頭を下げた。
※4月23日放送のNHK「チコちゃんにられる!」より抜粋・参照
まとめ
言葉たった一つがつくられるだけでも、当時は色々な思いや葛藤があったんだな感動すると同時に、真剣に日本の未来を考えていた人たちが、大勢いたんだろうなと感慨深かった。