家を借りる時に払う敷金と礼金がある。
敷金は大家さんに預けるお金なので返ってくることもあるが、礼金は大家さんにあげるお金…なので返ってこない、というのはもちろん理解している。
だが最近は「礼金無し」や「フリーレント(一定の期間、家賃が無料)」という所もあるというのに…なぜに、これほどの違いがあるのだろうか?
そもそも、礼金とは、何ぞや?
なんで礼金って払わないといけないの?
3月12日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」のゲストは森泉と東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦。
「綺麗なおうちに住んでそうな素敵な大人」に…岡村が立候補。
チコちゃんが「なんで礼金って払わないといけないの?」と岡村に聞く。
岡村は「ここ決まらへんと偉い事でした。助かりましたありがとうという…」と答えると「そのまんまじゃないの!ボーッと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱られた。
◯チコちゃんの答え
⇒礼金を払わないといけないのは、お江戸の町が人口爆発したから
礼金は謝礼金
詳しく教えてくれるのは国内唯一の不動産学部で不動産のルールを研究している、明海大学不動産学部 中条康彦教授。
先生は「礼金というのはありがとうの意味を込めて、大家さんに支払う謝礼金のことです。その始まりは江戸時代と考えられる」と言う。
江戸時代、爆発的な人口の増加で住宅が足りなくなる
1603年に始まり、260年程続いた江戸時代。
そこで起きた問題の一つが爆発的な人口の増加。
江戸の町の人口は、初期にはおよそ15万人。
それが1650年ごろには約28万人、1700年代に入ると約105万人を超え、当時のヨーロッパ最大の都市ロンドンの人口約86万人を大きく上回る世界最大級の都市になる。
この人口の激増によって、住宅が足りなくなるという問題が起きた。
長屋で対応
その問題に対応するために生まれたのが長屋。
家を壁一枚で6畳ほどに仕切り、一間に家族4、5人がひしめき合って暮らす、というもの。
狭い部屋が隙間なく並んだ長屋を作ることで、爆発的な人口増加に対応した。
長屋の土地は幕府の物。
幕府の土地に建てられた長屋を(幕府が大名に土地を貸して、大名が大家に土地を貸して)大家(家守)が町人に貸して暮らしていた。
これがこの国の賃貸制度の始まり。
賃貸制度と礼金の関係
江戸時代に生まれたという賃貸制度。
では、賃貸制度と礼金の関係は?
住む場所が足りない中、家を貸してくれたお礼として、借主が家守、つまり大家にお金を払い始めたことが礼金の始まり。
家守(大家)とは、現在でいうと管理人のようなもので結構大変な仕事だった。
「家賃の集金」「住人の身元保証」「争いごとの仲裁」「火事の対応」「住人への職のあっせん」に「結婚相手探し」など、ありとあらゆるサポートをしていた。
江戸時代の礼金は「(住宅不足の中)貸してくれてありがとう、さらには、これから面倒見て頂きます」という意味を込めて払っていたお金だった。
いくら払っていたのか?
一般的な長屋の家賃が約600文(約9,900円)、その3分の1程度を引っ越してくる時に家守に払っていた、と言われている。
その後、明治時代になると政府が土地の改革を行い、家守のいる賃貸システムは廃止になったが、代わりに賃貸仲介業者が生まれ、人々は引き続き長屋、借家などで暮らしていた。
明治時代に礼金は無くなったのか?
支払う相手がいなくなったので、そのままだんだんなくなるはずだが、慣習としては緩やかに残っていたと考えられる。
スタッフが「それが、今も残っている?」と聞くと先生は「いやそういう事でもないんです」と答える。
関東大震災で住宅不足が発生
大正時代、改めて礼金が必要になったと、言われている。
その原因は、関東大震災。
大正12年(1923年)9月11日に起きた関東大震災東京は、町の4割以上が、焼けてしまった。
家が足りなくなったので政府主導で、震災復興目的の公営住宅、月島住宅や同潤会アパート(同潤会青山アパート、同潤会三ノ輪アパート)なども建てられたが、それだけでは追い付かないほどだった。
やはり住む場所が足りない中では、お礼として、お金を払わないと家を借りることが出来なかった。
太平洋戦争で三度目の住宅不足が起きる
こうして関東沙大震災から立ち上がるが、昭和に入って再び住宅が不足が起きる。
1945年まで続いた太平洋戦争。
空襲を受け東京の町の3割ほど焼失。
3度目の住宅不足に陥る。
…つまり、東京では事あるごとに住宅不足が起こり、その中で家を貸してくれる大家さんに対してお礼を払う、その慣習が残り続けたと考えられる。
ちなみに、
1964年1月17日付けの朝日新聞の全国紙の賃貸住宅の入居者募集の欄を見てみると、例えば渋谷の物件は、家賃2万5千円のところ、礼金は家賃3ヶ月分と書かれている。(つまり、礼金7万5千円)
他にもいろいろあり、比べてみると物件によって礼金の額は、まちまちだったという事がわかる。
現在も、物件によっては家賃の1ヶ月分、あるいは2ヶ月と言ったようにばらつきがある。
現在は部屋が余っている?
さらに最近では礼金ゼロ、フリーレントといった物件も増えている。
現在の日本では、部屋を借りたい人に対して、部屋が余っているというのが現状。
空き室を一刻も早く埋めるため、礼金をゼロにしたり、フリーレントという、家賃を何ヶ月分か無料にするという賃貸物件も増えてきている。
礼金がかからない物件も増えているのも事実だが、今でも残り続けているというのは東京という街が、いろんな困難を乗り越えてきた証しなのかもしれない。
※以上3月12日放送のNHK「チコちゃんに叱られる!」より参照・抜粋
まとめ
確かに、引っ越しをする前、住宅情報を色々見た。
その時、礼金のある所、無いところなどもあり、若干意識した記憶はある。
ほとんどの物件の礼金は約1ヶ月分。
ただ同じ物件でも、取り扱い業者によっては、ゼロ円、または半額、という所もあった。
この違いは何だろう?と思ったものだったが、過去の慣習だったとは…。
見合い相手を探してもらう必要もない現代、管理費は別に払うわけだし、礼金…はもうなくてもいいような気はするんだが…。