アテネオリンピックで、他の選手がスタンディング姿勢をとる中、ただ一人、アメリカのトーマス・パーク選手が唯一クラウチングスタートをやったという。
初めて見た観客は、その時どう思ったのだろう?
ちなみに…
クラウチングスタートの「クラウチング」とは「屈む(かがむ)」という意味らしい。
クラウチングスタートって何?
7月3日の「チコちゃんに叱れる!」のゲストは五木ひろしと若槻千夏。
チコちゃんに「この中で、かけっこが得意な素敵な大人ってだあれ?」と聞かれ、いつものように「僕行っていいですか?」と岡村が言うと「何?かけっこが得意なの?」と五木が聞く。
今までこういう事を言われなかった岡村「別に五木先生でも構わない…」というと「譲る、譲る」と五木。
チコちゃんに「ちょっと前に出てきて!…かけっこ始めますよ」と言われた岡村、クラウチングスタートの形をとる。
すると「クラウチングスタートって何?」と聞かれる。
それを聞いた五木「これ譲ってよかった」といい、みんなが笑う。
岡村は「映画とか見る時、ポップコーンを食べたりしますよね。それと同じようにかけっこなりなんなりそういうのを見る時にクランチされたお菓子を食べながら…たまたまなんか…位置に着いていた時持っていたなんかがバラバラとあいつこぼれたのに拾わんと行きよったで。あれがホンマのスタート、ええスタート切りよったというのでクラウチングスタートになった」というと少し拍手が起きる。チコちゃんは「岡村、みんなボーっと生きてんじゃねーよ!」という。
〇チコちゃんの答え
⇒クラウチングスタートはカンガルーの真似
オーストラリア人がカンガルーにヒントを得たスタイルだった
詳しく教えてくれるのは、陸上競技の歴史を長年研究している滋賀県立命館大学岡尾恵市名誉教授。
先生は「クラウチングスタイルが生まれてくる前提としては、オーストラリア(人)のリチャード・クームズという人がカンガルーにヒントを得て考えられたもの」だという。
17~18世紀は、スタンディングスタートが主流だった
オーストラリア出身のリチャード・クームズさんはスポーツジャーナリスト。
17~18世紀ぐらいまでは、スタンディングスタートが主流。スタート方法に力を入れていなかった。
(記録に残されたもっとも古い短距離走は1845年。その頃は立ったまま走り出すステンディングスタートが主流)
しかし記録をさらに伸ばすためには、スタンディングスタートではだめだとリチャードさんが考えたのがカンガルーの前傾姿勢だった。
カンガルーの前傾姿勢のメリット
低い姿勢で重心を前にすることで、スタートの時起き上がるように一歩目が出せるのだ。
重心が前にあるほど地面を蹴る力が前方へ大きく働くので走り出してから素早くトップスピードに移行できる。
この姿勢こそがクラウチングスタートの原型だと言われている。
しかし速さで言えば哺乳類最速のチーターの方が真似するには良かったのでは?という疑問に先生は「本来動物は原則的に4足歩行。2足歩行の関係で人間の動きに近いカンガルーを思いついたのではないか」という。(二足歩行の人間にとってカンガルーの姿勢こそ素早くスタートできる姿勢だと先生は推測)
クラウチングスタートが世界に広がったきっかけとは
このカンガルーを真似したスタートは1896年のアテネオリンピックで世界中に広がった。
記念すべき第1回アテネオリンピック男子100m。
スタンディング姿勢をとる中でただ一人、クラウチングの姿勢をとる選手が1人いた。
アメリカのトーマス・パーク選手が唯一クラウチングスタートをやった。
(その時の様子を映した写真が出た)
そして1位で金メダルを取ったというのが衝撃的なことだった。
その時の記録は12秒ジャスト。
堂々の金メダルを獲得したことがきっかけで、第2回以降のオリンピックからは、ほとんどの選手がクラウチングスタートを取り入れたという。
スタートにどれだけの違いが出るのか?
実際スタンディングスタートとクラウチングスタートにどれだけの違いが出るのか…という事で岡尾名誉教授が以前監督を強めていた立命館大学の陸上部の皆さんに協力してもらった。
男子100mで10秒68を記録し全国大会で優勝した本郷選手に50m走で検証してもらった。
まずは「スタンディングスタート」から。
タイムは6秒64。
続いては「クラウチングスタート」
タイムは6秒20。
クラウチングの方がコンマ4秒秒以上早いという結果になった。
見比べてみても走り出しはクラウチングの方がワンテンポ早く、4秒後には人1人分の差が付いている
本郷選手は「クラウチングの時はスッと出るような感じだったが、スタンディングだと一回置く感じが(ある)…」と話していた。
スタンディングスタートの場合、力が真下にかかっているのでスタートする時、後ろ足を踏み込みワンテンポ遅れる。
しかしクラウチングスタートだと力が前に向いており、起き上がるようにスムーズにスタートが切れるという。
当時スタートのルールはあいまいだった
ちなみに…先ほどのアテネオリンピックの写真で一つ気になっていたことが…見ると1人の選手が手に棒のようなものを持っている。
先生に聞くと「木の棒ですこれが…腕の力を使いながらグーっと走ったんやろね」という。
今は禁止されているがスタートのルールはあいまいな部分も多く、木や鉛の棒を使い腕の力を使ってスタートを切る人もいたそうだ。
せっかくなので100mをほぼ同じタイムで走る学生3人に、第1回アテネオリンピックを再現してもらった。
「クラウチングスタート」「木の棒を使ったスタート」「スタンディングスタート」でそれぞれ走ってもらった。
結果は
1位 クラウチングスタート
2位 木の棒を使ったスタート
3位 スタンディングスタート
だった。
木の棒を使った選手は、スタンディングよりは早かったが、クラウチングには勝てなかった
「もしルール上、OKだったら使うか?」と木の棒を使ってスタートした選手に聞いてみると「理にかなった何かがあれば取り入れる」という。「現状は?」と聞かれ「現状はクラウチングスタート!」と答えた。
愛ちゃん情報
第1回のアテネオリンピックから広まったクラウチングスタートだが、しばらくの間は選手が自分で穴を掘って、足を滑らせないようにしていた。その為に選手は自分でスコップを持って順番待ちをしていたそうだ。
※7月3日「チコちゃんに叱られる!」参考・参照
まとめ
今の短距離走のスタートは確かにクラウチングスタートが多いが、小学校の運動会…高学年は覚えていないがたぶん低学年はスタンディングスタートが多い様な気がする。
できればその辺の理由も突っ込んで欲しかったな。