「ポチ」と聞けば、犬の名前と思ってしまう。
そういえば、なぜなんだろう?と思ったら…
…なんだそういう事か、と、あっさりわかってしまった。
あの歌をどこで聞いたかさえ忘れているのに
「ポチ」=犬
という事だけは覚えているなんて、不思議だ。
今回の「チコちゃんに叱られる!」はリモートだった。
ゲストは石川さゆり(NHKの大河で岡村と共演中)とウエンツ瑛士(現在日本にいる)、どちらも初登場だ。
最初の問題は「犬の名前」についてだ。
なんで犬の名前と言えばポチなの?
チコちゃんが「この中で一番、動物を愛する優しい大人ってだあれ?」と聞くと、石川が「うちでも犬や猫、亀もいる」と自己申告する。が、岡村はあえてウエンツを指名する。
ウエンツは、犬2匹(オザワ君、チャンちゃん)猫(ナナコちゃん)を飼っているそうだ。
チコちゃんに「犬の名前と言えば?」と聞かれウエンツは「ポチ」と答える。
するとチコちゃんは「なんで?なんで犬の名前と言えばポチなの?」と聞く。
ウエンツは「考えたこともなかった」と言いながら「犬を飼ったりする時はゲージに入っているじゃないですか、それを開けるのが『ポチッ』とこう開けたら…」と指で押すしぐさをする。
さらに「…気軽に犬を飼える時代があって、その時『ポチ』『ポチャ』ってあったんじゃないですか?」と答えるが「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われてしまった。
〇チコちゃんの答え
⇒犬の名前がポチというのは、聞き間違いを聞き間違えたから
「ポチ」という名前が付いたのは明治維新の頃
詳しく教えてくれるのは犬猫歴史研究家(ヤマザキ動物看護大学非常勤講師)の仁科邦男先生。
先生によれば、犬に「ポチ」という名前が付いたのは実は明治維新の頃で「外国人が多く住んでいた横浜から日本の犬の世界でも文明開化が始まりました」という。
「里犬文化」
実は江戸時代後期、日本の犬の飼い方と言えば地域や長屋単位で放し飼いで犬を飼う「里犬文化」だった。そのため犬の名前は誰が見てもわかるように「シロ」「クロ」「ブチ」など見た目で付けられていた。
しかしこの里犬文化には問題があった。
日本の犬のほとんどが番犬として飼われていたのでよく吠えた。
畜犬規則とは
外国人は特に吠えられていた。
そこでうるさい犬を何とかして欲しい、とクレームを付けられて日本の政府が新しい法律「畜犬規則」を作った。
畜犬規則=犬は飼い主と住所を書いた名札を付けて個人で飼う事とする法律。
このため、飼い主がいる犬でないと生きていけなくなった。
その時から初めて日本人は犬をペットとして飼う楽しみを覚えた。
そこで洋犬を飼っているのは、新しい金持ちたちのステータスだった。
時は文明開化…
外国に憧れた日本人たちは犬の飼い方でも外国の真似をして、犬と一緒に散歩をすることや、座敷や銭湯に犬を連れていくこと、そして犬に見た目ではない名前を付けることを真似する。
ポチという名前はどこから来た?
ではポチという名前はどこから来たのでしょうか?
「ポチは聞き間違いから生まれた言葉なんです」と先生。
そこで「NHKたぶんこうだったんじゃないか劇場」が始まった。
タイトル:「犬の名は。」
明治時代初期・横浜。
イギリス人のモーリー・ロバートソンは犬と散歩していた。
そこへ和服姿の日本人柳沢慎吾が通りすがる。(そして、いつもの無線ネタをぶっこんだ)
モーリーは柳沢が変な男に見えたので敬遠したかったが、モーリーの犬に気付き「かわいいワンちゃんだなぁ」と近づいてきた。
柳沢はモーリーに犬の名前を聞いたが、モーリーには、何を言ってるのかわからなかった。
そこで柳沢は犬が白黒のブチ色だったので「お前はブチだ」という。
(「日本人は見知らぬ犬を呼ぶ時に犬の毛色で言う。シロ、クロ…多いのがブチだった。『ブチ、ブチ』と必ず声をかけるんです」と先生は言う)
そして、これが聞き間違いの発端に…
柳沢が「ブチ」と言いながら犬をかわいがる様子を見て、モーリーは“この日本人は英語を知っているのか?犬の模様をちゃんと英語で「パッチーズ」と言っているなぁ”と感心した。
英語で「ブチ」の事をパッチーズ(複数形)という。
「おい、ブチ!」という言葉をイギリス人は「パッチ」と聞き間違った。
その証拠に、当時作られた和英辞典(「和英大辞典」:明治29年)にも「ブチ=パッチーズ」の文字があった。
…さらに、ここにもう一つ聞き間違いがおこる。
相変わらず柳沢が「ブチ」と言っているのを聞いて、モーリーは“ちゃんとパッチーズと言っているが、発音がひどすぎるな”と思っていた。
「旦那、かわいいな、このブチは」と柳沢がいうのでモーリーは「NONO、パッチーズ!」と正しい発音して教えた。
そんなことを繰り返しているうちに柳沢が「ポチ」と言ったので、モーリーは「OK!」と答えた。
これが効き間違いの相乗効果で…
①ブチ⇒②パッチ⇒③ポチ となった。
日本中にポチの名前が広がった理由
しかし、こんな小さな聞き間違いからどうやって日本じゅうにポチの名前が広がったのか?
教科書にポチ登場
「ポチという名前が定着したのは、文部省が作った最初の小学生の国語の教科書にポチという犬が出てくるから」と先生。
明治19年に作られた教科書「読書入門」に
ポチ ハ、スナオナ イヌ ナリ
ポチ ヨ、 コイコイ…
とイラスト入りで描かれている。
利口な犬、素直な犬の代表としてポチが登場した。
「幼年唱歌」にポチ登場
さらに明治34年には「幼年唱歌」に登場。
はなさかぢぢいの歌詞に…
♪ むらのはたけでぽちがなく…♪
という部分がある。
先生は「これで日本中に定着した、と考えられる」という。
犬の名前ランキング
明治43年の新聞記事に掲載された犬の名前ランキングでは、ポチは堂々の1位になっている(15匹)。
犬の名前ランキング(明治43年)
1位 ポチ(15匹)
2位 ジョン(13匹)
3位 マル(12匹)
4位 クロ(10匹)
5位 アカ(8匹)
6位 ポーチ(7匹)
7位 ボチ(6匹)
7位 チイ
9位 ハチ(5匹)
9位 シロ
※東京朝日新聞 明治43年7月3日
6位のポーチ、7位のボチ、も「ポチ」から発生した名前と言われている。
今でもポチに出会えるのか?
今でもポチに出会えるのかと聞くと「まぁ、ほとんどいないでしょうね」と先生は言う。
そう言われて、意地でも見つけたくなったディレクターは、ポチと呼べばポチが来てくれるはずと、ドックランにいる犬たちに「ポチ」と呼び掛けてみた。
そこに犬が一頭近づいてきたが、飼い主に名前を聞くと「ワサビ」だった。
その後も、近づいてきた犬がいたが、その犬の名前は「はると」だった。
ポチを探して1時間後…ポチという名前の犬がいると聞いて、その家を訪ねた。
住人に、ポチがいると確認して、連れてきてもらった。
家の中から、元気のいい柴犬のオスが出てきた。
ちなみにポチを飼っているこの堀越家では犬の名前は代々「ポチ」で、この犬は3代目だという。
そして「ポチ」と呼べば(スタッフでも)すぐ来た。
犬の名前ランキングBEST100(2019年)
ちなみに…
犬の名前ランキングBEST100(2019年)の結果は…
1位 ココ(942匹)
2位 モモ(828匹)
3位 マロン(750匹)
4位 ソラ(744匹)
5位 チョコ(706匹)
6位 ハナ(681匹)
…
68位 チコ(143匹)
ポチは圏外だった。
ちなみにタカシも1票入っていた、とのこと。
※アニコム損保調べ(105,547匹)※ポチの名前の由来には諸説あるらしい
まとめ
田舎で昔飼っていた犬の名前は代々「コロ」だったなぁ…。