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「人一倍」が「人二倍」じゃないのは、昔は一倍が2倍だったから!

チコちゃんに叱られる

文豪、夏目漱石は英語の教師をしていた時『I LOVE YOU』『月が綺麗ですね』と訳したとか、訳していないとか…

ん?なんか、どこかで、聞いたことがあるフレーズだな…

人一倍はなんで人二倍って言わないの?

「この中(岡村隆史・夏菜・大竹まこと)で一番、昔の言葉をたくさんしゃべっている素敵な大人ってだあれ?」と聞かれ…「調子いいんで僕行かせてもらっていいですか?」と岡村が立候補する。

今回の問題は、視聴者から届いた質問。
岡村が手紙を読んでみる。

「質問したいことは『人一倍、働いた』ということです。 なぜ『人二倍、働いた』とは言わないのですか」だった。

改めてチコちゃんが「人一倍はなんで人二倍って言わないの?」と岡村に聞く。

岡村は「これは、偉い人のミスだった!」と答えるが「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われる。

〇チコちゃんの答え
⇒「人一倍」が「人二倍」じゃないのは、昔は一倍が二倍だったから

チコちゃんの答えを聞いても3人は(ぴんと来ず)しばらく無言だった。

明治初期頃までは「一倍」は「二倍の意味」だった

詳しく教えてくれるのは、辞書編集一筋40年、日本国語大辞典、元編集長神永暁(さとる)さん。

「一倍」というのは、明治初期頃までは「×2」…つまり2倍の意味だった、という。

私たちは、普通リンゴ1個の一倍と言うとリンゴ1個と考えがちだが、実は明治初期までは一倍と言うとリンゴ二個と表現していた。

先生が「平安時代の『今昔物語集』という説話集の中に、とても分かりやすい例がある」と言うので、実践女子大で人一倍厳重に保管されている「今昔物語集」を特別に見せてもらった。

「今昔物語集 巻第十四」に書かれた説話

この貴重な資料を紐解いてみると…

お坊さんが金貸しとなり自分の婿にお金を貸すという物語の一文に…

「一年を経ルニ借レルところノ銭一倍シヌ」

「一年経って借りたお金が2倍になる、という高利貸しなんですけれども、その部分を一倍と言う言葉で表現している」と先生が解説。つまり「一倍」とは、今でいう2倍のこと。

だから「人一倍頑張った」というのは他人に比べて2倍頑張ったという事になる。

「層倍」

さらに明治以前は「倍」の他に「層倍」と言う表現もあった。

今でいう「×1」を層倍と言い、
「×2」を一倍、もしくは二層倍
「×3」を二倍、もしくは三層倍
「×4」は三倍、もしくは四層倍

…ややこしい。

明治8年 ×2が二倍になる

ところが、西洋文化が日本に入ってきて×2になって二倍になるという事になった。

明治以前は、日本では一倍は×2の事だったが、明治以降は二倍と言う言葉で×2を表現するように変わった。

当時の人たちも混乱したはず…

そこで、明治8年に公布された「太政管布告(だじょうかんふこく)」で一倍と表記していた×2の事をすべて2倍と表記することに決定。

今まで使っていた一倍という表記は禁止された人一倍と言う言葉はそのまま使われ続けたようだ。

西洋文化導入により影響を受けた日本語

人一倍はそのまま使われ続けたが西洋文化導入により変化した言葉もあった。

変化した言葉「四六時中」

一日中を意味する「四六時中」と言う言葉があるが、昔は「二六時中」と言っていた。

江戸時代は子の刻、午の刻など一日を12分割で表していた。
昼の6つと夜の6つを併せて丸一日を2×6で二六時中と洒落を使って表現していた。

しかし明治6年、24時間制が導入されると一日を24時間に分けた
そこで12を24にするため2×6から4×6に変え四六時中と言う言葉が生まれたと言われている。

このように明治になると西洋の思想が次々と取り入れられ日本語に様々な影響を与えた。
つまり西洋の思想には、それまで日本になかった概念が多く存在するため、その概念を表現するための日本語を新たに作り出す必要があった。

日本になかった概念を言葉にする

例えば英語の「スピーチ(speech)」という言葉。
意味は、議会や民衆などの前で自らの主張を述べる事。

当時の日本では、自分の意見を主張するには紙に書いて文書で伝えるのが一般的だった。
そのため「スピーチ」という言葉の意味を説明するために、お坊さんが説法をする様子を表わす仏教用語の「演説」をあてたと言われている。

福沢諭吉

この「演説」という言葉を現代の意味に定着させた人物が福沢諭吉。

「学問のすゝめ」では「演説」を「スピーチ」という事が説明されている。

「演説」とは、英語にて「スピイチ」と言い、大勢の人を会して説を述べ、席上にて我思うところを人に伝うなり。

他に「自由(liberty)」「討論(debate)」「経済(economy)」「動物園(zoo)」なども福沢によって広がった言葉と言われている。

「LOVE」は

ちなみにLOVEと言う言葉には「愛」という言葉があてられたが…「もともと『愛』は仏教語なんですけども、『何かに執着する』っていう言葉ですね」と先生。

愛(仏教用語)=執着

愛という言葉は今でいう「いとおしむ」という言葉ではなかった。
現代の意味で使われ始めたのは明治に入ってから、と言われている。

当時は「愛している」などの直接的な表現は避けられていて、あの文豪、夏目漱石は英語の教師をしていた時に『I LOVE YOU』と言う言葉を『月が綺麗ですね』と訳したとか、訳していないとか…

漢字を付けて一つの語に

「日本語ってカタカナと言う便利なモノがあって、それで書き表すとなんか言葉になっちゃうというところがあって、そうじゃなくて、ちゃんとみんながわかるように漢字を付けて一つの語(言葉)に仕立てていく作業ってすごいことだと思う」と先生は言う。

社会 権利 自由 科学 冒険 時間 過程 常識 個人 電報 衛生 哲学 概念 印象 世紀 恋愛 理想(画面に、これらの文字が出ていたので、たぶんこれらも、その時に作られた言葉、かな?)

現代人といえば…

しかし現代人といえば…

「フィードバック」=「振り返り」など
「スキーム」=「枠組み」など
「ファクト」=「事実」など
「コミット」=「関わる」など
「ストレージ」=「保管」など
「エビデンス」=「証拠」など
「シェア」=「共有」など
「インバウンド」=「外から中へ」
※=は、英語の簡単な意味合いを表わしています

など…分かったような顔して横文字使っていますよねぇ(ナレーションの言葉)…

先生は「ちゃんと翻訳した言葉があるのであれば、みんながわかるように使ってもらいたいな、ていう…」と言っていた。

※6月5日「チコちゃんに叱られる」より抜粋・参照

まとめ

確かに人一倍はなんで人二倍って言わないのか…。

言われて初めてその違和感に気付いたのだが、今回の答えはほんとにへぇ~だった。
明治の人は、よく頑張ったんだな、と改めて思った。

さらに月が綺麗ですねの話は、真子様の婚約会見の時に聞いたような…あれはどうなったのかな?

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