「チンする!」とか「チンね!」と言えば、たぶんほとんどの人が「電子レンジで温める」ということだとわかるだろう。あるいは「チン」=「電子レンジ」と認識している人もいるかもしれない。
「チン」は音を表わす擬音語である、と同時に今では名詞や、やや動詞になっている。
結構深いな~と思ったら…電子レンジ音が「チン」になったきっかけは意外と浅かった…。
なんで電子レンジは「チン」って鳴るの?
「この中(岡村隆史、田中美佐子、千葉雄大)で一番冷凍食品にお世話になっている大人ってだあれ?」と聞かれると岡村が立候補する。彼は、鍋焼きうどんとかストックで置いておくようにしているという。
チコちゃんに「冷凍食品はどうやって食べる?」と聞かれた岡村は「チンしますよ!」と答える。
さらに「なんで電子レンジはチンって鳴るの?」と聞かれ「これは人間の耳の構造です…ブーやったら都会の雑音に埋もれてしまうんです。特にこのコンクリートジャングル東京なんかは…」という。
だがチコちゃんは「(チンに)なったきっかけを教えて欲しい」という。
岡村は「…タイマーセットになっている。はじく…最初のタイマーの作りがチーンっていう…ドイツの…最初に作ったのがそういう構造だったんじゃないですか?」と頑張るが、結局「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言われてしまう。
〇チコちゃんの答え
⇒電子レンジがチンというのは藤井寺市にサイクリングに行ったから
かなり意外な答えに3人とも静かになる…。
チンの音は自転車のベルの音
詳しく教えてくれるのは電子レンジ界のレジェンド元大手家電メーカー社員の藤原康弘さん。
(電子レンジの「チン」という音を開発した本人)
藤原さんは「電子レンジのチンの音は自転車のベルの音をまねたもの。料理が仕上がったと知らせるためにチンと鳴らした」という。
(今とちょっと違う)チンが搭載された初期の電子レンジ『1971年(昭和46年)発売「Rー651」』の音を実際に聞かせてもらった。
「これが自転所のベルの音なんですよ」と藤原さん。
本物の自転車のベルが搭載されていた
確かに自転車の音だが、どうやってこの音を鳴らしているのかというと「ここに映っているのが自転車のベルなんで…」と電子レンジ内部の白黒の写真の一部を指で示す。
たしかに本物の自転車のベルが搭載されていた。
なぜ電子レンジの中に自転車のベルが入っているのか?
藤原さんは「今となればあの偶然は必然だったんですよ」という。
すると…
チンの音色よ鳴り響け
~入社4年目若手社員の戦い~
と題した「チコジェクトX」が始まった。
※過去に放送されていたNHK「プロジェクトX」を模した「チコちゃんに叱られる!」版ドキュメンタリー
「チコジェクトX」の内容をまとめてみた
「チコジェクトX」は文章にすると長いので、要約すると…
〇藤原さん、家電メーカーに入社
高度成長期の昭和36年、家電ブームの中、ものづくりが得意だった当時23歳の藤原さんは、家電メーカー(現SHARP)に入社。電子レンジ部門に配置される。
昭和36年、ライバル会社(たぶん現日立国際電気)が国内初の業務用電子レンジを販売。
昭和37年、藤原さんの会社も業務用電子レンジを販売する。
〇気付けば冷めているとクレームが入る
温まるのが早すぎて「出来上がったのに気付かなかった」というクレームが入る。
そこで“終了の合図を付ければいいんじゃないか?”という事になったが、どんな音を付ければいいかが、なかなか決まらなかった。
〇起死回生のサイクリング
そんな中、藤原さんは会社の催しでサイクリングに行く。
途中、危ないと鳴らした自転車のベルの音「チン」が、周りの皆が気になる音だと気付く。
そこで電子レンジに自転車のベルを取り付け、販売する。
家庭用電子レンジにも搭載し、大ヒット。
世界でいち早く1億台を売り上げた。
…そして人々は、電子レンジで物を温めることを「チンする」と呼ぶようになった。
(最後に、愛ちゃんから、日本で初めてターンテーブルを搭載したのも藤原さんの会社だということも紹介された)
※5月8日「チコちゃんに叱られる!」より抜粋・参照
まとめ
確かに電子レンジで温める?と聞くよりは「チンする?」と聞いた方が早いし確実に伝わる。
チンと簡単に言うが奥が深いかもしれない。
ちなみに外国でも、チンするというんだろうか?
※個人的に田口トモロヲさんのナレーションが好きなので最後の方におまけで書き取った文章を入れておきました。
その他の質問
おまけ
「チコジェクトX」
…かつて日本が東京で初めて行われるオリンピックに沸いていた頃、日本の料理にぬくもりをもたらすものがあった。電子レンジ…立ち上がった20代若手社員が、苦悩の末にたどり着いた迷路「チン」。これは戦後日本の食時のぬくもりを守るために戦った若手社員の挑戦の物語である…
チンの音色よ鳴り響け
~入社4年目若手社員の戦い~
…昭和39年 混乱する厨房 気付けば冷めている 暖かい料理をその手に 起死回生のサイクリング…
今から60年前のおよそ昭和36年、東京オリンピックの開催を前に日本は高度経済成長期に突入。
エアコンやカラーテレビが登場し家電ブームが到来していた。
1人の若人が家電メーカーの門を叩いた。藤原康広23歳。
藤原さん「小さい時からラジオとかいろんなものを作るのが好きだったので、その腕が生かせるかなと思いました」
“だれもやっていないことをしたい”
野心にあふれていた。
当時の家電メーカーの花形はカラーテレビ
しかし藤原が配属されたのは経った5,6人の電子レンジ部署だった。
昭和36年ライバル会社が国内初の業務用電子レンジ(DO-227)を発売。
入社翌年、藤原の会社も業務用電子レンジ(R-10)を発売。
当時一部のレストランや食堂車などでのみ使用されていた。
藤原は思った。
”もっと電子レンジを普及させたい“
その時、電話のベルが鳴った。
それは思わぬクレームだった。
「出来上がったのに気付かなかった」と言われた。
気付けば料理が冷めている。
あっという間に温まってしまう電子レンジ…。
そんな短時間で温まるとはだれも思わず、そろそろかと思った時には冷めてしまっていた。
“一体どうすればいいのか?”
藤原は考えた。
“終了の合図を付ければいいんじゃないか?”
目の付け所が鋭かった。
しかし電子レンジが使われていたのはうるさい厨房。
厨房でも気づかせるにはどんな合図がいいのか…。
藤原さん「何か音を出すということだったと思いますね。何かいい部品があればと常に頭の中から離れなかったですね」
どんな音を付ければいいか…
会議は空転、全員が頭を抱えた。
しかし藤原の会社は楽しい会社だった。
夏には運動会、冬にはダンスパーティ。
組合の催し物が盛んだった。
季節は春…。
藤原さん「サイクリングに行こうという話になりました」
会社があった大阪市の隣は国内有数の自転車産業の街、堺市。
だからかどうかわからないが、催しものはサイクリングに決まった
電子レンジの音の問題はどこへやら、藤原は社員に交じってペダルをこいでいた。
すると道幅が狭くなった。
次々とブレーキをかける社員たち。
その時、ある音が響いた。
藤原さん「危ないなと思って僕が『チーン』とベルを鳴らしました」
前の同僚が振り向いた。
道端の親爺が振り向いた。
い母さんも振り向いた。
赤子は泣いた。
誰もが気になる音だった。
“このチンだ!”
藤原さん「考えあぐねてたさなかですが、こういう事でこの音に巡り合えるとはちょっと思わなかった」
会社の隣町堺市の自転車屋さんからいくつものベルを取り寄せ、鳴らした。
チンがあっさり決まった。
藤原さん「誰もそれほど(電子レンジ)目を向けてくれていない時何でもやれた時代。
付けるのも勝手、どんな音が鳴るのも勝手、そんな時代です」
こうして自転車のベルが電子レンジにつまれた。
1967年(昭和42年)国内初「チン」と鳴る電子レンジ誕生!
このチンとなる電子レンジは大ヒット商品となり、家庭用にもチンという音が搭載。
藤原の会社は、世界でいち早く1億台を売り上げた。(世界初電子レンジ1億台という新聞記事)
そして人々は電子レンジで温めることを「チンする」と呼ぶようになった。
藤原さん「まぁやったなという感じですね。コンビニいっても『チンしますか?』って聞いてきますもんね。やったって感じですね。そこまでレンジの音を皆さんが言ってくれるとは思いませんでした。
日本でレンジが生まれておよそ60年。オリンピックがまた東京で待つ令和になっても人々は電子レンジで温めることを「チン」と呼んでいる。
今回、藤原さんはある場所(大阪府藤井寺市士師ノ里駅の近くチン発祥の地)に案内してくれた。
藤原さん「あ、この辺ですねこのあたりで自転車のベルをチーンと鳴らした覚えがありますね。雰囲気そのものは全く変わっていない適当にアップダウンがあって向こうに山が見えてちょうどサイクリング街道という感じでしょうか。50何年かぶりにこの地に立って当時の事がまざまざと思い出してきました。僕にとってプロフフェッショナルとは人生のあこがれに向かって取り組む姿勢
かな?」
以上。